研究組織・メンバー

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A02:異なる睡眠ステージにおける他領域間情報動態と生理機能の理解

研究代表者
常松 友美
東北大学大学院生命科学研究科・助教
WEBhttps://www2.fris.tohoku.ac.jp/~tsunematsu/

紹介文本文

睡眠は夢を見ているレム睡眠と、脳の休息に重要なノンレム睡眠からなる。どちらも外界からの感覚入力が遮断された同じ睡眠状態であるが、神経活動はそれぞれ脱同期、同期し、全く異なる脳状態をとる。また、記憶の定着・消去では、レム睡眠とノンレム睡眠で相反する役割を担うことが、本研究者らの研究により示唆されてきている。しかしながら、なぜこのような全く様相の違う神経活動、生理的役割を持ちうるのか、そのメカニズムや意義は全く分かっていない。
最近、本研究者は睡眠時特異的に発生するPGO波という局所フィールド電位を世界で初めてマウスから記録することに成功した。睡眠時特異的なPGO波は脳幹で発生し、外側膝状体や海馬、皮質等脳全体に伝播していき、記憶の消去に関わる可能性が言及されている。そこで本研究では、PGO波に着目し、シリコンプローブを用いた大規模細胞外記録法により、睡眠ステージに応じたPGO波と皮質神経活動、あるいは海馬神経活動の挙動やシグナル伝達の方向、大きさを解析する。本研究により、レム睡眠とノンレム睡眠の脳内情報伝達動態の違いを明らかにする。
さらに、光遺伝学を適用しPGO波の発生頻度を人為的に制御する実験も行う。脳波や神経活動を操作し、その結果としての記憶への影響、特に睡眠ステージにおける記憶の定着・消去の生理的役割を明らかにする。本研究は、脳情報動態の違いに着目することで、レム睡眠とノンレム睡眠の生理的機能の違いを生み出すメカニズムを追求し、ひいては2つの睡眠ステージの存在意義にも迫る。

文献

  1. Tsunematsu T, Patel AP, Onken A, Sakata S (2020)
    State-dependent brainstem ensemble dynamics and their interactions with hippocampus across sleep states.
    eLIFE 9: e52244.
  2. Yague JG, Tsunematsu T, Sakata S (2017)
    Distinct Temporal Coordination of Spontaneous Population Activity between Basal Forebrain and Auditory Cortex.
    Front Neural Circuits 11(64): 1-14.
  3. Tsunematsu T, Ueno T, Tabuchi S, Inutsuka A, Tanaka KF, Hasuwa H, Kilduff TS, Terao A, Yamanaka A (2014)
    Optogenetic manipulation of activity and temporally-controlled cell-specific ablation reveal a role for MCH neurons in sleep/wake regulation.
    J Neurosci 34(20): 6896-6909.

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