研究組織・メンバー
A02:多領域に渡る記憶セルアセンブリの動態解明
研究代表者
野村 洋
名古屋市立大学・大学院医学研究科認知機能病態学寄附講座・教授
WEBhttps://nomura-lab.github.io/
紹介文本文
記憶を始めとしてあらゆる脳機能は、個々の脳内局所回路の演算が適切に下流の脳領域に伝達されることで実行される。例えば古典的条件づけでは、内側膝状体、扁桃体、中脳水道周囲灰白質や側坐核、前頭前皮質の局所回路の演算と、領域間の情報伝達が共に重要である。私たちは特に、扁桃体と大脳皮質のセルアセンブリが記憶の形成、固定化、想起、消失に関与することを明らかにしてきた。しかし従来、局所回路のセルアセンブリ研究と領域間の情報伝達に関する研究は独立して行われてきた。そのため、ある領域内に含まれる記憶セルアセンブリが、他の領域の記憶セルアセンブリとどのように関係するかは不明であった。そこで本研究では、私たちが独自に開発した複数の脳深部領域の同時カルシウムイメージング法を用いて、多領域にわたる記憶セルアセンブリの動態を明らかにする。特に、記憶セルアセンブリに選ばれるニューロンの特徴や、学習の成立に伴って記憶セルアセンブリの形成、安定化が進むかについて、領域内および多領域にわたるセルアセンブリ両者に関して調べる。記憶に対応したセルアセンブリを同一個体から多領域にわたって継続して観察することで、多領域による記憶の貯蔵様式を解明する。本手法は記憶に限らず、多様な脳機能(運動、認知、情動、意思決定など)の解明にも適用可能であり、脳情報動態の解明に大きく貢献する。また、各種モデル動物へ適用することで、うつ病やてんかん、自閉症など精神疾患における脳情報動態の異常を解明する。
文献
- Nomura H, Mizuta H, Norimoto H, Masuda F, Miura Y, Kubo A, Kojima H, Ashizuka A, Matsukawa N, Baraki Z, Hitora-Imamura N, Nakayama D, Ishikawa T, Okada M, Orita K, Saito R, Yamauchi N, Sano Y, Kusuhara H, Minami M, Takahashi H, Ikegaya Y. (2019)
Central Histamine Boosts Perirhinal Cortex Activity and Restores Forgotten Object Memories.
Biol Psychiatry 86: 230-239. - Hitora-Imamura N, Miura Y, Teshirogi C, Ikegaya Y, Matsuki N, Nomura H (2015)
Prefrontal dopamine regulates fear reinstatement through the downregulation of extinction circuits.
Elife. 4: e08274. - Nomura H, Hara K, Abe R, Hitora-Imamura N, Nakayama R, Sasaki T, Matsuki N, Ikegaya Y (2015)
Memory formation and retrieval of neuronal silencing in the auditory cortex.
Proc Natl Acad Sci U S A. 112: 9740-4. - Nakayama D, Baraki Z, Onoue K, Ikegaya Y, Matsuki N, Nomura H (2015)
Frontal association cortex is engaged in stimulus integration during associative learning.
Curr Biol 25: 117-23