研究組織・メンバー

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A02:新規単シナプス性感染伝播ベクターを利用した神経回路選択的な活動計測・操作法の開発

研究代表者
井上 謙一
京都大学霊長類研究所・助教
WEBhttp://www.pri.kyoto-u.ac.jp/sections/systems_neuroscience/index.html

紹介文本文

高次脳機能のネットワーク基盤、あるいはその破綻としての精神・神経疾患の病態を解明するためには、特定の脳機能に関連する領域間および領域内神経回路の構成要素の活動を計測し、その結合関係と活動の時空間パターンの解析から、対象回路の持つ情報処理アルゴリズムを明らかにしていくことが本質的です。このためには、脳内で複雑に絡み合う神経回路網から特定の神経回路のみを抜き出してその活動を測定する技術が必要不可欠となりますが、この技術に資する遺伝子導入系として、様々な逆行性感染型ウイルスベクターが開発されてきています。その中でも、感染伝播能欠損型狂犬病ウイルス (delG-RV) ベクターは、ニューロン種特異的Cre発現トランスジェニック動物などを利用することにより、特定のニューロン種と、同ニューロン種に入力するニューロン群に選択的に神経活動分子センサーを導入することができるため、ターゲットとする神経回路の活動ダイナミクスを解析する為に極めて有用と考えられます。しかしながら、delG-RVベクターは遺伝子発現にウイルスゲノムの複製とそれに伴うウイルス由来遺伝子発現を必要とするために細胞毒性が強く、注入後数週間で感染ニューロンを死滅させてしまうため、活動イメージングへの利用は極めて限定的なものとなっています。このような背景から、本研究は、細胞毒性を低減して外来遺伝子発現持続能を向上させた新規delG-RVを開発し、特定の神経回路のみの神経活動計測をげっし類および霊長類で実現することを目的とします。また、その発展系として、複数の回路からの同時活動記録を実現する手法の開発にチャレンジします。

文献

  1. Tanabe S, Uezono S, Tsuge H, Fujiwara M, Miwa M, Kato S, Nakamura K, Kobayashi K, Inoue K, Takada M (2019)
    A note on retrograde gene transfer efficiency and inflammatory response of lentiviral vectors pseudotyped with FuG-E vs. FuG-B2 glycoproteins
    Sci Rep 9: 3567.
  2. Ishida H*, Inoue K*, Takada M (2018)
    Multisynaptic projections from the amygdala to the ventral premotor cortex in macaque monkeys: Anatomical substrate for feeding behavior.
    Front Neuroanat 12: 3.
    (* equal contribution)
  3. Inoue K, Takada M, Matsumoto M (2015)
    Neuronal and behavioral modulations by pathway-selective optogenetic stimulation of the primate oculomotor system.
    Nat Commun 6: 8378.

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