研究組織・メンバー

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A03:意思決定課題遂行中の大脳基底核並列ループにおける脳情報動態

研究代表者
田中 康裕
玉川大学脳科学研究所・准教授
WEBhttp://systemsneuro.science/

紹介文本文

動物は周囲から感覚情報を得て、その価値を判断し、運動を織りなす。そして、一連の過程には基本的には定まった方向性があり(感覚→報酬判断→運動)、同時に、工程の区切りを意識させることもないくらいに滑らかに行われる。スムーズな認知や運動を実現する機構として、大脳皮質と視床と大脳基底核群からなる大脳皮質―大脳基底核―視床ループ(以下、大脳基底核ループ)が重要と考えられる。大脳基底核ループについて解剖学から得られた知見として、並列する複数のループからなることが挙げられる。このようなループ間の情報の流れは滑らかな動物の行動と深く関わっていると考えられるが、実際に動物が行動課題を行っている最中に異なる大脳基底核ループ間で、どのような情報がやり取りされているか、といった情報動態はいまだ明らかでない。
本研究では、大脳基底核ループの神経活動を同時に計測し、神経活動に含まれる情報を行動関連性・報酬関連性などにより定量したうえで、ループ相互での情報の流れとして定量し、大脳基底核ループにおける情報動態を明らかにする。頭部固定下で意思決定課題装置を用いて課題を行うラットにおいて、ニューロピクセル電極を用いた大規模細胞外記録によりアプローチする。動物行動はビデオデータによる解析を組み合わせ、可能な限り行動と神経活動の関係を詳らかにする。また、神経活動の相互関係を調べるために、集団神経活動を縮約した低次元のダイナミクス解析を、リカレントニューラルネットワークによる学習を通して行う。これらにより、大脳基底核ループ間の情報の方向性とその内容を明らかにし、大脳基底核の並列ループにおける情報動態の一端を明らかにする。


(図の説明)意思決定課題中のニューラルダイナミクスをRNNにより解析する。

文献

  1. Tanaka YH, Tanaka YR, Kondo M, Terada S-I, Kawaguchi Y, Matsuzaki M (2018)
    Thalamocortical Axonal Activity in Motor Cortex Exhibits Layer-Specific Dynamics during Motor Learning.
    Neuron 100: 244-258.e12.
  2. Ebina T, Masamizu Y, Tanaka YR, Watakabe A, Hirakawa R, Hirayama Y, Hira R, Terada S-I, Koketsu D, Hikosaka K, Mizukami H, Nambu A, Sasaki E, Yamamori T, Matsuzaki M (2018)
    Two-photon imaging of neuronal activity in motor cortex of marmosets during upper-limb movement tasks.
    Nat Commun 9: 1879.
  3. Masamizu Y, Tanaka YR, Tanaka YH, Hira R, Ohkubo F, Kitamura K, Isomura Y, Okada T, Matsuzaki M (2014)
    Two distinct layer-specific dynamics of cortical ensembles during learning of a motor task.
    Nat Neurosci 17: 987-994.

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