研究組織・メンバー

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A03:発達障害における注意機能と社会行動の柔軟性に共通する神経ネットワーク

研究代表者
藤野 純也
東京医科歯科大学 精神行動医科学分野・助教
WEBhttp://www.tmd.ac.jp/med/psyc/

紹介文本文

発達障害の社会的孤立が生み出す経済損失は膨大です。しかし、同疾患群に対する有効な医学的支援は、いまだ限られているのが現状です。その要因の一つとして、自閉スペクトラム症(ASD)をはじめとした発達障害における社会的行動特性が、十分に解明されていないことがあげられてきました。
1990年代後半より、実験心理パラダイムと機能的MRIが急速に発展し、社会神経科学、なかでも、経済数理モデルを用いて人間の意思決定/行動選択を実証的に調べる行動経済学とその神経基盤を検証する神経経済学が興隆してきました。これに伴い、道徳観・共感性・曖昧性・信頼感など、その複雑さ故に質問紙での評価に留まっていた要素が関わる意思決定を、客観的・科学的に評価できるようになってきました。私達もこれまで、同手法を用いて、社会生活で重要かつ頻度の高い文脈において、このような要素が関わる意思決定のメカニズムを検証してきました。
これまでの研究結果より、多様な社会的場面を柔軟に対処するには、注意や物の見方の維持・切り替えを適切に行う機能、その神経基盤として外側前頭前野と側頭頭頂接合部を中心とした神経ネットワークなどが、特に重要な働きをしていることがわかりました。低次(non-social)な場面での注意機能が、高次(social)な場面で視点を柔軟に切り替え重要な情報を検知する機能に深く関連していることを示唆し、発達障害における柔軟性低下の病態理解に役立つことが期待されています。
本研究課題では、行動経済学的手法・複数のモダリティーのMRI・反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)を組み合わせて、上記知見を深めることを目的としています。これにより、発達障害の本質的理解、ニューロモデュレーションなど新規治療への応用を目指します。

文献

  1. Fujino J, Tei S, Itahashi T, Aoki YY, Ohta H, Kubota M, Hashimoto RI, Takahashi H, Kato N, Nakamura M (2020)
    Role of the right temporoparietal junction in intergroup bias in trust decisions.
    Hum Brain Mapp 41: 1677-1688.
  2. Tei S, Kauppi JP, Jankowski KF, Fujino J, Monti RP, Tohka J, Abe N, Murai T, Takahashi H, Hari R (2020)
    Brain and behavioral alterations in subjects with social anxiety dominated by empathic embarrassment.
    Proc Natl Acad Sci USA 117: 4385-4391.
  3. Fujino J, Kawada R, Tsurumi K, Takeuchi H, Murao T, Takemura A, Tei S, Murai T, Takahashi H (2018)
    An fMRI study of decision-making under sunk costs in gambling disorder.
    Eur Neuropsychopharmacol 28: 1371-1381.
  4. Fujino J, Tei S, Hashimoto RI, Itahashi T, Ohta H, Kanai C, Okada R, Kubota M, Nakamura M, Kato N, Takahashi H (2017)
    Attitudes toward risk and ambiguity in patients with autism spectrum disorder.
    Molecular Autism 8: 45.

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