研究組織・メンバー

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A03:競争時の辺縁系-運動回路の相互作用

研究代表者
菅原 翔・自然科学研究機構 生理学研究所・特任助教
WEBhttp://www.nips.ac.jp/fmritms/ , https://www.researchgate.net/profile/Sho_Sugawara

紹介文本文

ヒトの社会生活において他者との競争は避けることができない。特に、競技としてのスポーツでは競い合うことは本質的要素であり、それが数々のドラマを生む。他者と競争する状況は、単独で同じ活動を行う場合とどのように異なるのか?100m走を例にすると、スタートからゴールへと至るわずか10数秒の間に、競走相手と自分の相対的位置に応じて主観的感情や動機づけ状態が変化し、それを反映して運動出力がダイナミックに変動する。このような心的過程と運動出力の相互作用は、単独で走っている間には見られない。この間に我々の脳内では、感情や動機づけを媒介する辺縁系からの情報が、運動出力を制御する運動回路に対して修飾を行うと考えられる。よって本研究課題では、競走中に他者との位置関係によって変化する情動状態と運動出力との相互作用を媒介する神経経路を、超高磁場MRIによる高空間分解能を活かして詳細に理解することを目的とする。
競走時の筋活動制御は一次運動野(M1)から脊髄へと至る皮質脊髄路によって担われている。一方、内的に起こる感情や動機づけには腹側線条体・扁桃体・腹側被蓋野(VTA)といった辺縁系が重要な役割を担っている。特に、扁桃体とVTAはM1への直接投射を持つことが動物研究では報告されている。また、競走においては競走相手の状態を常にモニターすることが重要であり、内側前頭前野(mPFC)と側頭頭頂接合部(TPJ)といったメンタライジング・ネットワークが関与することが知られている。しかし、これらの機能回路の結合様式について十分に理解されているとは言えない。本研究では超高磁場MRI装置を用いることで、1)辺縁系の神経核を含めて機能回路間の結合様式を大局的に捉えた上で、2)M1内で機能回路の相互作用を支える入出力様式を皮質層解析によって明らかとする。

文献

  1. Sugawara SK, Koike T, Kawamichi H, Makita K, Hamano YH, Takahashi HK, Nakagawa E, Sadato N (in press)
    Qualitative differeces in offline improvement of procedural memory by daytime napping and overnight sleep: An fMRI study.
    Neuroscience Research.
  2. Kawamichi H, Sugawara SK, Hamano YH, Kitada R, Nakagawa E, Kochiyama T, Sadato N (2018)
    Neural correlates underlying change in state self-esteem.
    Scientific Reports. 8: 1798.
  3. Kawamichi H, Sugawara SK, Hamano YH, et al. (2016)
    Increased frequency of social interaction is associated with enjoyment enhancement and reward system activation.
    Scientific Reports. 6: 24561.
  4. Sugawara SK, Tanaka S, Okazaki S, Watanabe K, Sadato N (2012)
    Social rewards enhance offline improvements in motor skill.
    PLoS One. 7: e48174.

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