研究組織・メンバー

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A03:霊長類ドーパミン経路における価値判断を操作するスパイクパターンの同定

研究代表者
雨森賢一・京都大学 白眉センター/霊長類研究所・特定准教授
WEBhttps://researchmap.jp/kenamemori

紹介文本文

不安障害では罰を過剰に評価するのに対して、依存症では罰に対する嫌悪感を維持したまま報酬獲得の意欲が制御できなくなることが知られています。こうした幅広いスペクトラムの神経疾患に、腹側被蓋野  (VTA) のドーパミン (DA) 神経伝達を担う神経回路の破綻が関わると考えられています。しかしながら、この同一回路がどのようにして両極端な精神障害を引き起こすかについてはわかっていません。その中でも側坐核 (NAc) から VTA への投射は DA 細胞を制御する重要な経路です。本研究では、NAc から DA に至る経路が抑制と脱抑制の投射からなることに着目し、NAc のスパイク系列の「動的な変化」が DA 細胞の興奮・抑制応答を切り替え、不安障害から依存症に至る幅広い症状を引き起こす、という仮説を立てました。この仮説に基づき、次の2つの研究目標を立てました。
【目的1】NAc スパイク列の動的な変化が、DA 細胞の応答を制御している可能性があります。これを調べるため、光遺伝学の手法を用い、NAc から VTA への投射繊維にスパイクを生成させ、DA 細胞に与える影響を調べます。
【目的2】DA 細胞に影響を与える NAc スパイク列が、実際に不安や価値判断に、行動レベルで寄与することを、不安や価値判断を定量評価できる葛藤課題を用いて示します。
本研究では、NAc スパイク活動の違いが、DA 細胞の興奮・抑制応答を制御し、行動レベルでも楽観・悲観の価値判断の変化を引き起こすことを示すことを目標とします。本研究は、こうした不安障害と依存症といった正反対の症状が同一回路のスパイク活動ダイナミクスの違いによって引き起こされることを、単一細胞活動と行動レベルの両面から示す可能性があります。

文献

  1. Amemori K, Amemori S, Graybiel AM (2015)
    Motivation and affective judgments differentially recruit neurons in the primate dorsolateral prefrontal and anterior cingulate cortex.
    Journal of Neuroscience. 35: 1939-1953.
  2. Friedman A, Homma D, Gibb L, Amemori K, Rubin S, Hood A, Riad M, Graybiel AM (2015)
    A corticostriatal path targeting striosomes controls decision-making under conflict.
    Cell. 161: 1320-1333.
  3. Amemori K, Graybiel AM (2012)
    Localized microstimulation of primate pregenual cingulate cortex induces negative decision-making.
    Nature Neuroscience. 15: 776-785.
  4. Amemori K, Gibb LG, Graybiel AM (2011)
    Shifting responsibly: the importance of striatal modularity to reinforcement learning in uncertain environments.
    Frontiers in Human Neuroscience. 5: 47

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