研究組織・メンバー

研究組織・メンバー

A02:発達障害の病態理解に向けた小脳-前頭前野-領野連関の解明

研究代表者
石田 綾・慶應義塾大学医学部・生理学・助教
WEBhttp://www.yuzaki-lab.org/

紹介文本文

自閉スペクトラム症(ASD)は、コミュニケーションの困難さ、限定された興味、常同行動を中核症状とする発達障害ですが、有病率が高く、近年増加傾向にあることからその病態解明が重要な課題となっています。私はこれまでにASD関連遺伝子の機能を明らかにすることが病態を理解するための糸口と考え、ASD関連分子Neurexinに結合するCbln1が小脳の回路形成に必須であることを示しました。また、ASDの関連疾患であるRett症候群の症状や分子機構について、モデルマウスを用いて研究を行ってきました。
しかし、個々の遺伝子の関与が明らかにされる中で、ASDの中核症状をもたらす共通原理については未解明な点が多く残されています。近年、画像解析の結果からASD者では脳領域間の結合性(領野連関)が健常者と異なることが報告されています。また、古くからASD者では小脳に病理的変化があるとの報告があり、小脳皮質と前頭前野(PFC)の結合性に変化があると指摘されていることから、小脳とPFCが機能的に結合し、ASDに関連する高次機能を制御することが示唆されます。
そこで本課題では、小脳-PFC領野連関に焦点を当て、小脳からの出力がPFCの機能にどのような影響をもたらすのかを明らかにすることを目指します。トレーシング技術を駆使し、野生型マウスの脳で小脳からPFCに到るまでの投射経路を明らかにし、各投射経路を特異的に制御することで、マウスの行動に及ぼす影響を明らかにします。さらに、明らかにされた経路についてASDモデルマウスを用いて解析することにより、小脳―PFC領野連関が発達障害の病態に果たす役割について検証します。

文献

  1. Ito-Ishida A, Yamalanchili HK, Shao Y, Baker SA, Heckman LD, Lavery LA, Kim J, Lombardi LM, Sun Y, Liu Z, Zoghbi HY. (2018)
    Genome Wide Distribution of Linker Histone H1.0 is Independent of MeCP2.
    Nature Neuroscience. (accepted)
  2. Ito-Ishida A, Ure K, Chen H, Swann JW, Zoghbi HY. (2015)
    Loss of MeCP2 in Parvalbumin-and Somatostatin-Expressing Neurons in Mice Leads to Distinct Rett Syndrome-like Phenotypes.
    Neuron. 88: 651-8.
  3. Ito-Ishida A, Miyazaki T, Miura E, Matsuda K, Watanabe M, Yuzaki M, Okabe S. (2012)
    Presynaptically released Cbln1 induces dynamic axonal structural changes by interacting with GluD2 during cerebellar synapse formation.
    Neuron. 76: 549-64.

このページの先頭へ