研究組織・メンバー

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A03:単一神経細胞から脳血流信号までを繋ぐ脳情報動態の全脳データベースとモデル構築

研究代表者
松井鉄平・東京大学大学院医学系研究科統合生理学教室・助教
WEBhttps://www.physiol2.med.kyushu-u.ac.jp/

紹介文本文

脳の大域的な情報動態を理解することは神経科学の重要課題の一つです。たとえば精神疾患は、遺伝子/分子レベルの異常が大脳ネットワークの異常に繋がり、最終的な行動異常を起こす多階層的で複雑な現象です。近年、脳の大域的な情報動態を理解するために、大脳ネットワークの計算モデルを作るという構成的なアプローチが始まっています。このような全脳シミュレーションを行う際、単に大脳の解剖学的な結合を再現するだけではモデルの拘束条件として不十分であり、現実的な脳活動を示すものから非現実的なものまで様々なモデルが出てきてしまうことが分かってきています。この問題を解決するには、非常に多数の自由度を持つ大脳のモデルに対して、実際の脳活動を再現するようにモデルのパラメーター空間を制限することが重要です。このための脳活動のデータは、理想的には単一神経細胞、大規模回路にいたる全ての階層のデータが単一のモデル動物で得られていることが望まれます。しかしながら、多くの実験的研究では、細胞-回路レベルでの研究はマウス、大脳ネットワークレベルでの研究はヒトの機能的MRIが主に使われており、全ての階層における脳情報動態を同一のモデル動物で計測したデータベースはありません。私たちはこれまで、マウスを用いて、神経細胞集団の活動とそこから生じる脳血流を同時に記録する手法を開発しました(Matsui et al., PNAS, 2016)。この手法は、脳血流での計測が中心のヒト脳活動が、実際にどのような神経活動に由来しているのかを理解する役に立っています(Matsui et al., Cerebral Cortex, 2018)。本研究ではこの技術を更に発展させ、単一神経細胞、神経細胞集団、脳血流という異なる階層の信号を同時に記録する技術を開発します。さらに、この技術を用いた脳情報動態のデータベースを構築し、リアリスティックかつヒトへもトランスレータブルな大脳ネットワークモデルの作成へと繋げることを目指します。

文献

  1. T Matsui, T Murakami, K, Ohki. (2018)
    Transient neuronal coactivations embedded in globally propagating waves underlie resting-state functional connectivity.
    Cerebral Cortex. doi:10.1093/cercor/bhy045.
  2. T Murakami, T Matsui, K. Ohki. (2017)
    Functional segregation and development of mouse higher visual areas.
    Journal of Neuroscience. 37(39): 9424-9437.
  3. T Matsui, T Murakami, K, Ohki. (2016)
    Transient neuronal coactivations embedded in globally propagating waves underlie resting-state functional connectivity.
    Proceedings of the National Academy of Sciences. 113 (23): 6556-6561.
  4. KW Koyano, M Takeda, T Matsui, T Hirabayashi, Y Ohashi, Y Miyashita. (2016)
    Laminar Module Cascade from Layer 5 to 6 Implenting Cue-to-Target Conversion for Object Memory Retrieval in the Primate Temporal Cortex.
    Neuron. 92 (2): 518-529.

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