研究組織・メンバー
A01:高精細全脳イメージングを用いた負の情動行動制御における多領野連関解析
研究代表者
笠井淳司・大阪大学大学院薬学研究科・助教
WEBhttp://molpharm.umin.jp/index.html
紹介文本文
精神的ストレスは、ストレス応答機構としての不快情動を惹起し、不安などの情動行動を引き起こす。この情動行動は、複数の脳情報の並列処理や同期的活動など多領域連関により制御されていると考えられる。これまでに情動行動制御の中心的な役割を担う神経核として、前頭前皮質・扁桃体・腹側海馬がわかってきた。しかしながら、それらの同調や機能的連関を制御する神経回路基盤についてはあまり明らかにされていない。そこで私たちは、この多領野連関の神経基盤を明らかにするため、最近開発した高精細高速全脳イメージングシステムFAST(block-face serial microscopy tomography)を用い、社会的な敗北ストレスにより活性化する神経細胞を特定の脳領域に絞らずに全脳領域を対象に解析した。その結果、これまでストレスとの関連が未報告な微小な脳領域が重要な役割を担っていることを見出している。本研究では、この微小脳領域内のストレス応答性神経細胞の活動を特異的に操作し、不安様行動への影響を明らかにするとともに、単一細胞レベルの全脳活動地図を作成し、全脳領域から活動連関する神経細胞群を明らかにする。さらに、全脳活動地図の計算科学的な解析や脳局所の光学的計測法を組み合わせ、精神的ストレスの入力から行動的な出力までの脳情報動態の解読を目指す。
文献
- Seiriki K1, CA Kasai A1, Hashimoto T1, Schulze W, Niu M, Yamaguchi S, Nakazawa T, Inoue KI, Uezono S, Takada M, Naka Y, Igarashi H, Tanuma M, Waschek JA, Ago Y, Tanaka KF, Hayata-Takano A, Nagayasu K, Shintani N, Hashimoto R, Kunii Y, Hino M, Matsumoto J, Yabe H, Nagai T, Fujita K, Matsuda T, Takuma K, Baba A, CA
Hashimoto H. (2017)
High-speed imaging and scalable whole-brain imaging in rodents and primates.
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Structured line illumination Raman microscopy.
Nat Commun. 6: 10095