研究組織・メンバー

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A02:高等哺乳動物における脳情報動態の基盤構築形成機構の解明

研究代表者
河崎洋志・金沢大学医学系・教授
WEBhttp://square.umin.ac.jp/top/kawasaki-lab/

紹介文本文

ヒトの大脳皮質の表面にはシワ(脳回)が存在する。脳回の存在により大脳皮質の表面積は増加し、より多くの神経細胞を持つことが可能になったと考えられている。また脳回異常疾患である多小脳回症や滑脳症などは重篤な脳機能障害を来たすことから、脳回は重要な構築と考えられている。しかしマウスの大脳皮質には脳回はなく、マウスを用いた脳回の解析が困難であることから、脳回の形成原理および脳情報動態における脳回の重要性の解析は著しく遅れている。そこで我々は脳回を持つ高等哺乳動物フェレットに着目し、独自の分子遺伝学的解析技術を確立してきた。フェレットで遺伝子機能を解析するために、子宮内エレクトロポレーションを応用しフェレットの大脳皮質での遺伝子発現を可能とした。さらに子宮内エレクトロポレーションとゲノム編集技術CRISPR/Cas9を組み合わせ、フェレット大脳皮質でのノックアウトが可能であることを示してきた。さらにこれらの技術を用いて、FGFシグナル、転写因子Tbr2およびリン酸化酵素Cdk5が脳回形成に重要であること、また脳回形成異常である多小脳回症フェレット疾患モデルを作成し病態解析を行ってきた。そこで本研究課題では我々の独自のフェレットに関する分子遺伝学的技術を用いて、脳情報動態の基盤となる脳回の局所神経回路の解析および形成原理の解明を目的とする。我々の技術は、脳回以外にもこれまでに解析が困難だったヒトなどの高等哺乳動物に特有の脳神経構築の研究に応用が可能である。

脳回の神経回路と形成プロセスの解明

文献

  1. Matsumoto N, Shinmyo Y, Ichikawa Y and Kawasaki H (2017)
    Gyrification of the cerebral cortex requires FGF signaling in the mammalian brain
    eLife. 6: e29285.
  2. Shinmyo Y, Terashita Y, Dinh DTA, Horiike T, Kawasumi M, Hosomichi K, Tajima A and Kawasaki H (2017)
    Folding of the cerebral cortex requires Cdk5 in upper-layer neurons in gyrencephalic mammals
    Cell Reports. 20: 2131-2143.
  3. Shinmyo Y and Kawasaki H (2017)
    CRISPR/Cas9-mediated gene knockout in the mouse brain using in utero electroporation
    Current Protocols in Neuroscience. 79: 3.32.1–3.32.11.
  4. Toda T, Shinmyo Y, Dinh DTA, Masuda K and Kawasaki H (2016)
    An essential role of SVZ progenitors in cortical folding in gyrencephalic mammals
    Scientific Reports. 6: 29578.

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